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   国歌は、国際的な慣例でパブリック・ドメインとなっています。つまり、世界で最も演奏頻度が高い楽曲でありながらも、いつでもどこでも自由に演奏、歌唱することが出来ます。考えてみれば当たり前の話で、(多くの国々では)国内においては官庁や学校で歌われ、海外でも特別儀仗やスポーツイベントで度々演奏・斉唱される国歌に対していちいち課金するなど物理的に不可能ですし、やればやったで顰蹙を買うことでしょう。オリンピックで金メダルを穫っても、「使用料を請求されるのであれば演奏はしません」などと云われ日には目も当てられません。

 

   そのため意外なことにも和訳についても、予め公式訳を用意している駐日大使館は殆どありません。確かに膨大な数の言語に対応した公式訳を用意するとなれば大変な作業です。外務省職員総出でも手に負えない。拙著『国のうた』に収録した84ヶ国については、駐日大使館に自らしたためた和訳をお送りし内容を確認して頂きましたが、中にはチェックをすると公的に承認したことになり兼ねないためお断りします、という国さえありました。その意味でも国歌は、特別な扱いを受けている唯一の楽曲と云えます。