
地盤・看板・鞄を持たない高市早苗内閣総理大臣は、同じく政界とは無縁であったにも関わらず2度にわたり頂点を極めたドナルド・トランプ米大統領の情報戦略を手本に自由民主党総裁選挙、そして第51回 衆議院議員選挙を勝ち抜いたと云えるでしょう。
基本的にコミュニケーション能力に乏しくコンセンサスを取り付ける、いわゆる”根回し”が苦手な高市総理は、トランプ大統領が編み出した手法に活路を見出し、これを模倣した形跡が見て取れます。
ジョン・F・ケネディ大統領がテレビ・メディアの潜在力にいち早く着目したようにトランプ大統領は、選挙戦ならびに広報・啓蒙活動においてSNSを効果的に導入、活用した史上初の為政者として歴史に名を残すことでしょう。未だにネット社会に適応しているとは云い難い日本のマスメディアや有識者と称される方々は指摘していませんが、私は6年前にこのブログで彼のSNSストラテジーについて考察を加えています。
https://japanews.co.jp/concrete5/index.php/Masazumi-Yugari-Official-Blog/2020/2020-10/マスメディアなんぞ蹴っ飛ばせ
高市総理は、自らの”弱点”を補って余りある”ツール”、まさに起死回生の一矢を手に入れた。その意味において高市総理にとってのトランプ大統領とは、媚びへつらうような”主従関係”ではなく、”師弟関係”であるとも云えます。記者会見を極力減らし (現時点で34回。過去においては岸田文雄氏が90回、石破茂氏は57回で安倍晋三氏は44回)、1日2回のペースで自らSNSで発信することで (5ヶ月間で370回)、対面での質疑応答を極力避けて来ました。
この戦略は思いの外功を奏し、特に物心ついた頃からデジタル・デバイスに囲まれ、古色蒼然とした”談合政治”に辟易していた若年層には”新時代のリーダー”、ジャンヌ・ダルクとして映った。澱んだ政界を刷新する象徴ともなりました。昨年10月25〜26日に産経新聞社とFNNが行った合同世論調査ではZ世代にあたる18〜29歳の支持率が89.1%といった驚異的な高さを示すなど、自由民主党が不得手としていた無党派層の取り込みにも成功しています。込み入った話は家族や友人ではなく、生成AIに相談する現代の若者たちは、その内向的性格と同じ波長を高市総理の言動から敏感に嗅ぎ取っていたのかも知れません。

しかしながら”師”と仰ぐトランプ大統領と高市総理との決定的な違いは、唯我独尊であるとは云え彼の人並み外れたコミュニケーション能力にあります。トランプ大統領は記者会見のみならず連日、記者たちを執務室に招き入れ、質疑応答に応じています。意外に思われるかも知れませんが、知己の米国人記者によれば、彼ほどオープンに取材を受け入れる米大統領はこれまでいなかったと云います。テレビのトーク番組のみならず電話取材にも気軽に応じる。閣僚も広報官も”取っ払い”でダイレクトに持論を説く。つまりはSNSに代表される”飛び道具”と対面でのやり取りの両輪が合わさって初めてトランプ流スピン・コントロール、世論操作は成立するというわけです。
一方、高市総理はSNSによる”成功体験”を過信し、頑なに単独取材を拒み続けています。ここに大きな落とし穴があります。ネット情報の寿命は短い。SNSであれば1日から長くとも2日で消費され、忘れ去られてしまいます。サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させるプラットフォーム Society 5.0 が漸く鳥羽口に立った現段階では、どうしても立ち居振る舞いや顔色、文言の選択や語り口が観る者の評価を左右します。
『週刊文春』のスクープに端を発した自由民主党総裁選挙における高市陣営のライバル候補や野党への”中傷動画”の作成・拡散問題はその最たるものでしょう。国会での高市総理の曖昧かつ感情的な答弁に接し「裏切られた」と感じた若者も少なくないはずです。若年層は理屈ではなく、感覚で判断します。事実、毎日新聞が先月23、24日に実施した世論調査では18〜29歳の支持率が前月比6ポイント減の50%となり、下落傾向が続けています (昨年10月から今年2月までは70〜76%)。
さらにはSNS戦略をロジカルかつ精緻に構築したわけではないため、そのリスクを十分には理解されていない節が窺えます。ベンチャー業界の人間は、安易に権力に迎合するようなタイプの人種ではありません。経済的メリットがなければ迷うことなく手の平を返す。
かつてのように自由民主党が絶対的なパワーを有していた時代であればまだしも、党勢に陰りが見え、高市総理が党内で孤立していることが誰の目にも明らかな今となっては何ら怖れるものはありません。高市総理が「彼らが勝手にやったこと」と罪を擦り付けようものなら、遠慮会釈なく次々と”不都合な真実”がリークされることでしょう。身の回りの情報さえ管理出来ない者に、果たして国益を左右するインテリジェンスをコントロールすることが出来るのでしょうか。スキャンダルと時を同じくしてインテリジェンスの司令塔機能を担う「国家情報会議」設置法が成立したことは、皮肉以外の何物でもありません。














































