
日本サッカー協会 (JFA) は、来年1月にサウジアラビア王国で開催される AFCアジアカップまで現・日本A代表監督 森保一氏との契約を延長し、来年3月からは現・U-21代表の大岩剛監督をA代表監督に据え (兼務)、2030年にモロッコ王国とスペイン王国、ポルトガル共和国の3カ国共催となる第24回 FIFAワールドカップまで指揮を任せると発表しました。
ちょっと待って下さいよ。森保監督は今回のFIFAワールドカップ 2026に際して「優勝する」と宣言し、多くの俄サポーターたちに夢と希望を抱かせました。例えそれが代表選手のモチベーションを高めるための”方便”であったとしても指揮官である以上、その言質の責任は問われて然るべきでしょう。まずは声援を送って下さった国民や関係者に向けて”目標”を達成出来なかったことを真摯に謝罪し、自ら身を引く。当然のことながら続投は固辞するのが筋というものです。続投決定後の記者会見で、「W杯は結果でいうと、もっと上に行きたかった悔しさはあるが、それがやり残したことかというと、そうではない。特に悔いはない」 と、平然と云ってのけるその無神経さに驚かされたのは私だけでしょうか (そう云えば、どこぞの総理大臣も国会への対応を問われ、「反省点は特にない」と答弁していました)。
「優勝する」と公言しておきながらベスト32如きで敗退したともなれば、サッカー王国であれば生卵を投げつけられる程度では済みません。事実、私が取材したFIFAワールドカップ 1994 では、優勝候補の一角と目されていたコロンビア共和国代表は1次ラウンド第2試合の対米国代表戦を痛恨のオウンゴールによって落とし、1次ラウンドで姿を消しました。このオウンゴールを喫したセンターバックのアンドレス・エスコバル選手は帰国後、「Gracias por el auto gol」 (オウンゴールをありがとう) と叫ぶ暴漢によって射殺されてしまいます。敗戦後、国民の非難や報復を恐れたチームメイトが米国に留まる中、ただ一人「自分はあのオウンゴールについてファンやマスコミに説明する義務がある」と云い、まさに命懸けの帰国の末の悲劇でした。
「優勝」を”約した”JFA、森保監督にそれだけの覚悟はあったのでしょうか。空港で黄色い声援と共に選手たちを出迎えたサポーターたちは修羅場の厳しさを知っているのでしょうか。そもそも私は森保氏が2018年 (平成30年) に代表監督に就任した当時から彼の監督としての資質には疑問を抱いていました。サンフレッチェ広島F.Cの監督時代、4年間で3度のJリーグ優勝は果たしたものの、戦術的には前任のミハイロ・ペトロヴッチ監督の5トップや可変DFラインを踏襲しただけで国際経験は皆無に等しい。明らかに世界のトップチームと互角に戦えるだけの才覚と経験値は持ち合わせていませんでした (殆ど無名であった彼がハンス・オフト監督に見出され、1992年に日本代表に初招集された際に取材した経験がありますが、いわゆるオーラが感じられない大人しい選手といった印象でした)。ただ彼は、JFAがこだわり続けた「日本人」であったことだけは確かです。
森保監督の2期8年間の成績は107試合で73勝18敗16引き分け。親善試合とは云え、強豪スペイン王国やブラジル連邦共和国、ドイツ連邦共和国などを破り歴代最高の実績を残しました。しかしながら”本番”のFIFAワールドカップではベスト16 止まり (カタール大会 2022年)、AFCアジアカップ2019では2位、同・2023では史上最低タイの8位。EAFF E-1 サッカー選手権では22年と25年に優勝はしているものの、決して華々しい成績ではありません。
こうした戦績も、実のところは海外のプロリーグで切磋琢磨し”個”の実力を高めて来た代表選手たちによるもので、森保監督の手腕とは言い難い。それは今回のFIFAワールドカップ北中米大会のノックアウトステージでブラジル連邦共和国代表に敗れた試合の後半の采配を見れば明らかでしょう (ハイドレーションブレーク中に、死闘を繰り広げている選手たちに向かって「勝つなら延長、PK」と指示する監督など一体どこにいるでしょう)。百戦錬磨のカルロ・アンチェロッティ監督との実力差は歴然。「優勝を狙えるチーム」の指揮官との格の違いを見せつけられました。
森保監督は屡々、代表選手と密にコミュニケーションを取り、チームの結束力を高める人心掌握術に長けている、との評価を受けて来ました。しかしながら私に云わせれば、そのようなチームの和を形成する”仲良しクラブ”の調整役はコーチの仕事。監督は孤高の存在であり、例え鬼であっても知力、謀略を駆使して勝てば良い。真剣勝負とはそういうものです。

JFAの宮本恒靖会長は、森保監督続投の理由を問われて「アジアで結果を出せる監督は誰か、という観点を重要視した」と説明しました。また、世界トップクラスの監督を招聘しなかったのは「新しい外国人監督が来てゼロからスタートするのか、今持っているものを生かすのか議論した結果、継承を優先すべきだと考えた」からだと臆面も無く明かしました (実際には、年俸が10億円は下らない一流監督のギャランティを支払えるだけの財政的余裕がJFAにないことがその最大の理由です)。
一体全体、JFAは日本のフットボール (サッカー) を強化、進化させる気があるのでしょうか。後任の大岩監督は、森保監督に輪を掛けて国際経験がありません。2年後に米ロサンゼルスで開催される第34回 オリンピック競技大会のアジア出場枠は僅か「2」。U-23 日本代表との兼任となる大岩監督がもしも出場権を逃してもJFAは続投を支持し続けるのか。それとも現在の”日本人”コーチング・スタッフである長谷部誠氏か名波浩氏を大抜擢するのでしょうか。
残念ながら現時点において、行き当たりばったりのJFAに翻弄される日本代表チームが格段に強くなる要素はどこにもありません。私たちが“最高の景色”を見られるのは20年後、50年後…。私の目が黒いうちには、決して”奇跡”は起こらないでしょう。確かなことは、それだけです。







































