広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトでは、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去14年間に延べ149名の高校生たちによって描かれた171点もの作品群の中から数点を順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。
『母の背中 大火傷にウジ虫が動く』 作/山下聡美 所蔵/広島平和記念資料館 (2020年度)
被爆体験証言者の瀧口秀隆さんは、白島北町で被爆し、3日後にリヤカーで広島駅へ行き、山陽本線に乗って母親の実家があった松永 (広島県福山市) に命からがら辿り着きました。母親は、原爆の熱線を浴び首筋から背中にかけて、下半身もふくらはぎから足首に至るまで大火傷を負っていました。
それを見た祖母は、「まるで魚のはらわた(腸)を割ったようじゃ」と悲しんだそうです。その痛々しい背中に蠅が卵を産み付け、やがてウジが湧く。火傷の上を這うウジに強烈な痒みを覚えた母親が「取ってくれ」と懇願するため、祖母や親族が泣きながら、割り箸でウジを摘まんでいる様子が描かれています。