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 広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトには、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去12年間に描かれた137点もの作品群の中から数点を順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。

 

くちびるの潰れた友達』作/奥野天葵 所蔵/広島平和記念資料館 (2016年度)

 昭和20年8月8日、比治山にあった半地下式の防空壕の中で、建物疎開の作業中に被爆し、大火傷を負った中学生。被爆体験証言者の浅野温生さんは、少年の火傷で潰れてしまった口元に、救助にあたった女性が缶詰のミカンを流して込んでいる様子を見ていました。女性は泣きはらしながら、「カタキはとってあげるけんね」と必死に少年を励ましていたと云います。

浅野さんはこのプロジェクトを通じて、歴史を「言葉で伝える難しさを実感した」と云います。「地獄絵の様な体験は、当時の色、死臭、火傷ではみ出した内臓が焼けたトタンの上でボコンボコンと煮えている音など、説明しても、画像化するのは難しかったと思う」。