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   此の度、拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』が、お陰様で第66回 青少年読書感想文全国コンクール(主催/公益社団法人 全国学校図書館協議会・毎日新聞社 後援/内閣府・文部科学省 協賛/サントリーホールディングス株式会社)の課題図書〈中学校の部〉に選出されました。この場をお借りして、お力添え頂いた被爆体験証言者そして広島市立基町高校の皆様に改めて感謝の意を表します。また、心温まる感想をお寄せて頂いた数多くの読者の皆様、本作の意義に共鳴して頂いた書店員の皆様、そして本作の刊行を英断された くもん出版の志村直人代表取締役社長様を始め、同社編集、営業、販売部の皆様にも心から御礼申し上げます。

 

   過去20年余りにわたり、「広島」をテーマに据えた一般書籍は減少の一途を辿っています。その内、多数の方々に幅広く読まれた作品は、漫画『この世界の片隅に』(こうの史代 著)など、ほんの数点しかありません。被爆後75年を経て広島の、そして被爆者の皆様の切なる願いとは裏腹に、「広島」に対する世間一般の関心は、急速に低下していると云わざるを得ません。悲しいかな、それが、嘘偽りのない現実です。

   そうした向かい風の中、拙著は課題図書に選定して頂きました。お陰でこの作品は、全国すべての学校図書館ならびに公立図書館へ確実に配本されます。また、全国の書店員の皆様にも積極的に展開して頂けるものと期待しております。

 

   著者として何よりも嬉しいこと。それは本作が、これからの日本を、世界を背負って立つ数多くの若者たちの手に渡り、広く読んで頂けることです。そう。お話を伺った被爆体験証言者の皆様が被爆を体験したのとちょうど同じ年頃の子どもたちです。涙を流しながらも歯を食いしばり、描き切った高校生たちの弟や妹と同じ年頃の子どもたちです。彼らが被爆の実相を知り、何を感じるのか。同世代の高校生たちの”記憶”を”記録”する真摯な取り組みを知り、何を想うのか。どのような感想文を書いて下さるのか、興味は尽きません。

 

   云うまでもなくこの作品は、ちっぽけな種に過ぎません。地道に水をかけ、肥やしをやり、丹精に育てて行かなければ、大輪の花を咲かせることは出来ません。決して平坦な道程ではないでしょう。しかしながら私は、被爆体験証言者そして広島の高校生たちの想いを託されたひとりとして、皆様にお力添え頂きながら、これからも、微力ながらも”広島のこころ”を語り継いでまいりたいと思っております。

   広島の皆様にはこれまで大変お世話になり、多くのことを学ばせて頂きました。この作品により、少しでもご恩返しが出来たとすれば、これほど嬉しいことはありません。また、お目にかかりましょう。あの、広島の青い空の下で。