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 マスメディアと政官界の癒着が巷では批判の的となっています。私のような一匹狼には、幸か不幸かまったくご縁のないお話ですが、「アクセス・ジャーナリズム」と称されるこうした取材手法は今に始まったものではなく、事の善し悪しはさて置き、これまで一定の機能を果たして来たことは事実です。

 

 ただ、少なからず実情を知る同業者として云わせて頂ければ、問題はこういった特ダネの取り方が、すでに時代遅れとなっていることに業界が気づいていない、といった点に尽きます。10年前いや20年前までであれば、新聞がスクープを載せる、テレビがスクープを報じることで部数は上がり、視聴率も取れたでしょう。しかしながら今や、必ずしも”売上”には直結しない。読者・視聴者は、ネットニュースで特ダネの見出しまたは要約だけを読み、脊髄反射し、瞬く間に消費する。新聞を実際に購買してまで事件の詳細を知ろう、といった人々は、悲しいかなほんのひと握りしかいません。

 

 ならばなぜ、ミイラ取りがミイラになる危険を冒してまでネタを穫りに行くのか。リーク…。確かに親密な関係を築くことで政治家や官僚から内部情報が提供されることは少なくありません。しかしながら、それらは何らかの思惑があって意図的に流される情報です。必ずしも記者が自ら足を使って掘り起こしたものではない。単に「おたくが書かないのであれば他社に漏らしますよ」といった「抜かれる」ことへの恐怖心でしかありません。そんな同業他社との競争など読者や視聴者にとってはどうでも良いことであり、しかも”売上”には繋がらないともなれば、何のために? と素朴に思えてしまいます。自らを律することはもちろん大切ですが、マスメディアの役割自体が大きく変わりつつあることを認識しなければ多少、政官界との付き合い方を改めたところで根本的な改革にはならないでしょう。

 

 私のような立場から云えば、大手マスメディアは多くの優れた人材とネットワーク、資金力、そして影響力を擁しています。そろそろ身内のスクープ合戦には見切りをつけ、それら戦力を専門性の高い調査報道に振り向けられてはいかがでしょうか。これからの時代、その方が余程、読者・視聴者のニーズに応え、”売上”にも貢献出来ると思うのですが…。