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 何々? それでもIR(統合型リゾート)を推進したいとな? そいつぁ無理な相談というものです。「射幸心を煽ってはいけない」、「ギャンブル依存症を出してはいけない」などと、ねむいことを云っているようでは巨額なマネーが唸りを上げて飛び交う切った張ったのカジノ運営なんざぁ夢のまた夢。そもそもこうした規制をかけること自体、ギャンブルのレゾンデートルを否定することにもなります。云ってみれば、「うちはサビ抜きの寿司しか握らねぇよ」と、板前さんが胸を張っているようなもの。「はいはい。仰せの通りその条件で賭場を開帳しましょう」などといった間抜けな胴元は、世界広しと云えどもどこにもいない。

 

 ならば1990年代に米ラスベガスがギャンブル依存の街から大きく舵を切ったように、ファミリー層も楽しめる一大エンタテインメントのセンターを目指すのか? いやいや、世の中そんなに甘くはありません。やるとなれば、それこそブロードウェイ・ミュージカルやシルク・ドゥ・ソレイユが常時上演されている、テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデといった大物アーティストが月替わりで来日・出演するといったレベルのブッキングが出来なければ、マカオやシンガポールを差し置いて国内外の”ウェール”たちを呼び込むことなど出来ません。百歩譲って、日本国内で大規模なカジノ・ビジネスが成立するとすれば、東京ディズニーランドかユニバーサル・スタジオ・ジャパンの敷地内に設けるしかないでしょう。

 

 日本市場からの撤退を決めた最も裕福と云われるIR企業米ラスベガス・サンズは、MICE(国際会議や見本市等)の受け口としての可能性を探った形跡がありますが、それさえ採算ラインをクリア出来ないと判断したのでしょう。同社が撤退を決めたことで、国交省が来年1月4日から申請を受け付けるIR整備計画に名を連ねる事業者があるとすれば香港、シンガポールをベースとしたアジア系IR企業となる公算が高まっているように思われます。

 

 一方で、欧州には小さいながらも歴史を感じさせる品格あるホテルカジノが幾つもあります。もちろん収益は比べようもありません。しかしながら例えば、京都・先斗町の町家の一角に公営のポーカー・テーブルがある、富山の五箇山合掌造りの古民家に漆と金箔で精妙な細工を施したホイール(ルーレット)がある、といった風情あるスタイルの方がよほど我が国の遊興文化とは愛称が良い。また外国人観光客にも喜ばれるはずです。しけた机上の空論に付き合うほど大手カジノは暇ではない。素人が博打に手を出しゃあ火傷しますぜ、内閣府の旦那。