20230821-1.jpg
 

 

   広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトでは、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去16年間に延べ190名の高校生たちによって描かれた191点もの作品群の中から数点を選び順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。本年度も、新たに9作品が制作されました。

 

『白島河岸と被災者の流れ』 作/吉田日向葵 所蔵/広島平和記念資料館 (2020年度)

 

   昭和20年8月6日、倒壊した荒神町国民学校大須賀分散授業所で家屋の下敷きとなったものの、何とか抜け出すことの出来た証言者の梶矢文昭さんは、被災者の群れに混じって、懸命に逃げました。

この作品は午前9時半頃、饒津神社 (東区二葉の里) の前で列を成して逃げ惑う被災者の様子を描いています。猿猴川には幾つもの遺体が流れ、対岸の白島九軒町一帯は業火に包まれ、無数の人々が崩れ落ちるかのように河川敷に降りている様子も窺えます。

当時6歳だった梶矢さんは、人の流れに遅れないように、必死になってついて行きました。漸く辿り着いた二葉山の中腹も被災者のうめき声で溢れ、そこからは黒煙を巻き上げ業火に包まれた広島の街が見えたと云います。

梶矢さんは、同じく被爆した作家 原民喜がメモに書き残した「コハ今後生キノビテコノ有様ヲツタヘヨト天ノ命ナランカ」を、常に心に留め、被爆体験を証言されています。

 

このページのトピック