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 年若いジャーナリストに、インタビューのコツを尋ねられることが屡々あります。(私の如き一匹狼がお教え出来ることなどさしてありませんが…)そんな時、私は「可能な限りノートを取れ」とアドバイスしています。

 

 今や、ボイスレコーダーを取材に用いることが当たり前の時代となりました。私は、長らく取材ノートだけを使っていましたが昨今は、記憶力が低下したため… いや、記録として残す歴史的価値の高いインタビューが多い、万が一にも取材相手からクレームが出た場合に備えて発言内容を残す、または方言を再現するためにボイスレコーダーを使用するようになりました。ただ、執筆の際に録音を丸々聞き返すことはまずありません。

 

 取材メモは、自分にしか読解不能な”暗号”の羅列です。よってこれら独自の「キーワード」から記憶を辿り、原稿にしたため、音声で当該箇所を確認することとなります。この「ノート・テイキング(Note-Taking)」の技術は、米大学で鍛えられました。

 ご存じの通り米大では、教授は講義内容を懇切丁寧に黒板に書いてはくれません。寧ろ、黒板を使わない授業の方が遙かに多い。講義はすべて口頭。続いてディスカッションに入ります。また、日本のようにノートを貸し借りするといった”慣習”がないため、効果的にノートが取れなければ、試験では地獄を見る羽目に陥ります。

 

 ノートを取る、ということは自分の心に響いた言葉を記録する作業です。殴り書きのような単語やフレーズ…。しかしながら不思議なことに数10年経っても、当時の取材ノートを紐解けば、取材相手の表情や会話の一字一句が鮮明に甦って来ます。録音は”事実”ですが、ノートはあなたにとっての”真実”です。これを怠ると、あなたの声は聞こえなくなります。

 

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