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既報の通り、拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた86日の記憶』は、お陰様で一般社団法人日本子どもの本研究会の第4回「作品賞」を受賞するに至りました。有り難いことに拙著は、数ある候補作の中から選考委員会の皆様の満場一致を以て、いの一番に選んで頂いたとのことです。

 

今年は、新型コロナウイルスの影響で、残念ながら表彰式は中止となってしまいましたが、会報『こどもの本棚』(10月号)に「作品賞受賞の言葉」を寄稿させて頂きました。そこで私は、

「ある意味、奇跡のタイミングでこのプロジェクトに出会うことが出来ました。被爆体験証言者が昭和二〇年八月六日、あの朝を迎えたのは十代、国民学校や旧制高等学校、女学校に通う年齢でした。彼らの『記憶』を描くのは今を生きる現役の高校生、そして本作を読んで下さる皆さんも十代を謳歌する子どもたちです。十年前に取材を行っても、十年後に試みても、こうした時空を超えた同世代の『共有空間』、パラレルワールドを生み出すことは不可能だったでしょう。まさに被爆から七五年を経た今でしか、綴ることが出来ない作品でした」と、書きました。

「決して忘れてはならない過去の歴史を”教える”のではなく、”共有”していただく。時空を超えた『共通言語』を生み出すことに主眼を置きました。この点においては、これまでの教科書的な記述に終始していたノンフィクション作品と一線を画すことが出来たのではないかと自負しております。多くの読者が、『この子は僕と同い年だ』、『この子は私の妹に似ている』と、思って下さったのではないか。遠い、遠い昔の話が、まるで見て来たことのように目の前に立ち現れたのではないかと」

 

  これまで昭和20年8月6日を描いたノンフィクション作品は、名著『原爆の子〜広島の少年少女のうったえ』(編 長田新)を始め何10冊、何100冊とありました。しかしながら、過去に偏ることなく、過去と現在、そして未来を等間隔で描いた作品、被爆体験証言者と現在を生きる高校生を対等に扱った作品はひとつもありませんでした。

 

平和のバトンを手渡すリレーはまだ始まったばかりです。私も、そしてあなたもアンカーではありません。ゴールは、遙か彼方。平和が続く限り、リレーは続きます。50年も、100年も。

 

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