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一昨日は、米大統領選挙の第1回候補者討論会をライヴで観ていました。結果、『New York Times』紙を始め米マスメディアは、待ってましたとばかりにドナルド・トランプ大統領を酷評。マスメディアが集計した世論調査も軒並み、ジョー・バイデン候補「優位」と報じています。何かと云えばフェイク・ニュースだとわめき散らすトランプ大統領とは犬猿の仲のマスメディアにしてみれば当然の反応でしょう。しかしながら、政策の善し悪し、品性のあるなしはさて置き、個人的にはトランプ大統領の圧勝といった印象を受けました。

 

ご覧になった方はおわかりになったと思いますが、とにもかくにも誹謗中傷の応酬で、テレビ討論会史上希に見る泥仕合。これが超大国のリーダーを決めるディベートかと思うと、ウンザリするのを通り越し呆れてしまいました。

ところで泥仕合と聞いて、思い浮かべるのはプロレスです。トランプ大統領のあの独特の毒舌話法は、実はプロレスのパフォーマンスから来ていることをご存じでしょうか。彼は1988年、自ら所有していたニュージャージー州アトランティックシティのホテル『トランプ・プラザ・アンド・カジノ』で、今や米国ではドル箱コンテンツとなっているワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)の興行を催したのを皮切りに、2007年には何と自らリングに上がり、マイク・パフォーマンスまで行っています。いわゆる「おいこら、長州っ! 出て来んかい!」といった類のトークです。彼の罵詈雑言が散りばめられたスピーチは、プロレスによって磨かれたと云っても過言ではありません(事実、WWEの名物オーナー ヴィンス・マクマホンの妻リンダは、トランプ大統領によって2017年2月から昨年3月まで要職のひとつである中小企業庁長官に任命されていました)。

 

問題なのはバイデン陣営です。ディベートにおいてトランプ大統領が、こうしたプロレス殺法を繰り出して来ることは想定の範囲内であったにも関わらずまったくの無策。お粗末さが際立つ展開でした。トランプ大統領の挑発をさらりと受け止め、洒落の効いたトドメのひと言をジャンピング・ニーパットよろしく炸裂させ、グゥの音も出させない、くらいのスマートさがあれば株も上がったものの、防戦一方だった上に、遂には感情を露わにして「史上最悪の大統領」とまで罵ってしまう始末。これではトランプ陣営の思うツボです。

 

そもそもバイデン候補は、高齢ということもあり生気に欠け、テレビ映えしない。興奮して何度も噛む姿は、まるで年老いた大学教授の講義を見ているようで痛々しい限りでした。方やトランプ大統領はと云えば、意識的にインテリ層が公の場では用いない日常的な文言を多用し(さすがに放送事故に繋がる卑猥な四文字言葉は口にしませんでしたが…)、やんちゃだけれどもとにもかくにも庶民に近しいといったイメージを明確に打ち出していました。どこぞの国と同じく、政治には疎い大多数の米国民にとっては、ストレートに「米国第一主義」を唱える彼の方が遙かにわかりやすい。残念ながらウケは良いでしょう。

 

 あと2回の討論会で両者がどのように戦略を立て直して来るかにも因りますが、どうやらトランプ大統領の再選は固いようです。しかもかなりの大差がつくのではないかと。民主党としては、ミシェル・オバマ氏を大統領候補に担ぎ出すことが出来なかった時点で、すでに勝敗は決していたように思います。