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おやおや、港町の市長さん。新型コロナウイルスの感染拡大で、壊滅的な打撃を蒙っている地域社会の実情を目の当たりにして、すっかり目を覚まされたかと思いきや、未だに寝ぼけたことを云っておられる。「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)は、国の政策であるから住民投票の結果は市の誘致方針に影響を与えない」とか。

 

ちょいと待って下さいよ。そもそも横浜市は、まだIR候補地に選定されたわけではありませんから(正式決定は2022年頃)。選ばれてもいないのに、住民投票を求める署名が20万筆を上回ったというのに、市民の声よりも政府方針に従うってフライングというか、ちょいと正直過ぎやしませんか。それって政治家としてどうなのでしょう。国の骨太方針から「IR」の二文字が消え、基本方針すら策定出来ずにいるのに…。菅笠の旦那とは旧知の間柄の”浜のドン”も、IRについては「カジノは博打。山下埠頭で博打をやるなということだ」と、反対されていることは先刻ご承知のはず。潮を読めない政治家は、官邸にも市民にも舐められてしまいますよ。

 

最右翼と見られていた米カジノ大手ラスベガス・サンズが早々と日本撤退を決め(詳細は今年5月23、26日の投稿をご覧下さい)、米ウィン・リゾーツも横浜事務所を閉鎖。もうひとつの米大手MGMリゾーツ・インターナショナルも第2四半期の収益が前年比95%減となり、オンラインギャンブルへと路線変更したことから対日投資は一気にトーンダウン(夢洲への誘致を目指す大阪府市にも、同社が参画する可能性はほぼゼロとなったと見て良いでしょう)。

そもそも新型コロナウイルスの影響で4月には全米989ヶ所のカジノがすべて閉鎖され、6月に営業を再開したもののネバダ州のカジノ収益はほぼゼロという異常事態から、各社共に日本進出どころの騒ぎではありません。マカオも同じくで7月のカジノ収益は前年比95%減に落ち込んでいます。このためカジノ各社は生き残りを賭けて”地上戦”から”空中戦”(オンラインカジノ)へと大きく舵を切っている。こうなると利に聡いカジノ業界は一気に手仕舞いに入るでしょう。

 

唯一、日本進出の可能性があるとすればシンガポールで『リゾートワールド・セントーサ』を経営するゲンティン・シンガポール。知名度は低いにも関わらずアジア各国を中心にゲーミング・ビジネスを展開する華僑系大手企業です。地元住民に対する高額な入場料やゲーミングフロア面積の規制など、日本政府の”品行方正な方針”とは比較的相性がいい。また、ハイローラーをカジノへ招待し、一切の費用をケアするジャンケット・ビジネスに対してネガティヴなところも好感が持たれています。

同社はかつて「横浜の開発上限額を100億米ドルに設定した」と喧伝されましたが、利ざやの薄い日本市場に果たして乗り込んで来るかどうか。新型コロナウイルスの感染拡大によって、IR実現の可能性は限りなくゼロに近づいた、もしくは世界のカジノ業界では三下と見られている企業と組まざるを得ない、というのが偽らざる現実です。はてさて港町の市長さん、

 

〽 歩いても 歩いても 小舟のように 

わたしはゆれて ゆれて あなたの腕の中 

 

と行きますかどうか。未だ賽は投げられてさえいませんが…。