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詩人 高村光太郎は、「智恵子は東京に空が無いといふ」(『智恵子抄』「あどけない話」より)と綴りました。

都会に住む皆さん、空を見上げる時間が増えましたね。風を感じる刹那に恵まれましたね。今年、私たちは新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで当たり前と思えた日常とは、まったく異なる世界を体験しています。今ほど家族と会話を交わしたことはありましたか医療関係者に想いを馳せたことはありましたか身近な人々を愛しいと感じたことはありましたか?

 

新型コロナウイルスは、私たちの営みを蝕み、破壊し、そして尊いいのちを奪い続けています。出口の見えない現実を前にしても尚、歩みを止めないことは容易ではありません。それでも、人生は続きます。諦めることなく、挫けることなく半歩、そして一歩でも前へ、踏み出さねばなりません。

 

私たちは今、雄大な自然に触れて心洗われることも、大切な友人と心置きなく語り合うことも、出来ません。あの時見た目映い珊瑚礁、壮麗な山並み、あの時耳にした子どもたちの笑い声、皆と分かち合った歌声は、まるで遠い昔に出会ったお伽噺のようにさえ感じてしまいます。それでも私たちは、都会にも空があることを知りました。

 

この試練をいかに受け止め、乗り越えて行くかは、私たちの心の持ち様次第です。神は、私たちに暫し立ち止まり、人という生き物の行く末について思索することを求めているかのようにも思えます。日々、飛び交う生臭いニュースとは異なる、もっと大きな、豊かな、限りない私たちの未来について。

 

今年もあと3日を残すだけとなりました。さぁ、空を見上げて、スッと深呼吸して。まずは、あなた自身を讃えることから始めましょう。来年は、必ず出会えます。あの自然に、あの大切なひとに。2021年が、あなたにとって美しき年となりますように。

 

48000点もの応募作の中から選ばれた今年のシエナ・インターナショナル・フォト・アワーズ2021 (SIPA)の受賞作品には、美しい自然と人々の営みが切り取られています。いつかまた、こんな素敵な日常が戻りますように(写真をクリックするとSIPAサイトへ移動します)。