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広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトには、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去13年間に描かれた152点もの作品群の中から数点を順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。

『絶望・死にゆく人』作/是永千穂 所蔵/広島平和記念資料館 (2018年度)

被爆体験証言者の末岡昇さんは被爆後の8月18日、祖父母の遺体を拾いに行く道すがら、西新町(現・土橋町)の焼け跡で、黒く汚れ、絶望の末、自ら望んで死を待つ人を目撃しました。屋根のように立てかけられたトタン板は、おそらく見るに見かねた人が、転がっていたもので即席の屋根を作ってあげたのでしょう。

末岡さんは、「絶望して死ぬ人など、普通は一生見ることなどないでしょう。むしろ大怪我をして苦しむ人や亡くなった人の方が描きやすかったのではないかと思います」と云います。また、是永さんも「人が黒くなっているなんて想像が出来ず、色を作って塗るのに抵抗を覚えました。この場面は、一般的には知られていない光景なので、戦争を知るひとつのきっかけになれば」と、考えています。

この作品に描かれた方は被爆後、「助けてくれ! 助けてくれ!」と、何度も、何度も叫ばれたことでしょう。それでも同じく生死の境を彷徨う人々は、誰も手を差し伸べない、差し伸べることが出来ませんでした。絶望。自らのいのちが終焉を迎える刻をひたすら待つ...。どれほど苦しく、辛かったことでしょう。仄かないのちと、どのような対話をされたのでしょう。原爆の、そして戦争の怖ろしさ、惨さがひしひしと伝わる作品です。