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「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」(宮澤賢治『銀河鉄道の夜』より)

 

童話作家・詩人 宮澤賢治の命日にあたる昨晩、ジョバンニと共に、銀河を彷徨って来ました。星祭りの夜、ダンサーであり振付家、演出家でもある勅使河原三郎さん演じる『銀河鉄道の夜』を東京・両国のシアターXで体感しました(構成・振付・演出・照明・美術 共演左東利穂子)。勅使河原さんは、独創的な身体表現を自ら切り開き、世界的に高い評価を得ているまさに孤高の芸術家です。

 

私にとって今回の舞台は、積年の念願でした。勅使河原さんのパフォーマンスを初めて観たのは1988年、一世を風靡したトップモデルの故・山口小夜子さんとのコラボレーション・ダンスパフォーマンス『夜の思想』でした。30代半ばだった当時の彼は、まるで研ぎ澄まされたナイフの鋒のような鋭さを観る者に突きつけて来ました。昨晩の彼には、鍛え抜かれ、幾たびも血を吸った日本刀を想わせる凄みが加わっていた。狂気と虚無、狂騒と静謐。勅使河原さんのパフォーマンスには、時空を超越した異次元へと目撃者を誘う魔力があります。本物と呼べる数少ないアーティスト。嗚呼、また彼の幻夢にゆっくりと、どっぷりと惹き込まれてしまいました(映像は、2012年の『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 熱狂の日 音楽祭』におけるヴァイオリニスト庄司紗矢香さんとの共演の様子)

 

 

「ジョバンニは思わずかけよって博士の前に立って、ぼくはカムバネルラの行った方を知っていますぼくはカムバネルラといっしょに歩いていたのですと云おうとしましたがもうのどがつまって何とも云えませんでした。すると博士はジョバンニが挨拶に来たとでも思ったものですか、しばらくしげしげジョバンニを見ていましたが

『あなたはジョバンニさんでしたね。どうも今晩はありがとう。』とねいに云いました。」(宮澤賢治『銀河鉄道の夜』より)