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  広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトでは、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去13年間に131名の高校生たちによって描かれた152点もの作品群の中から数点を順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。

 

『焼け跡からやっと見つけた孫娘を連れ帰るお婆さん ーその女の子の膝から下は骨になっていたー』 作/野村かなめ 所蔵/広島平和記念資料館 (2016年度)

 

   昭和20年8月7日午後、被爆体験証言者の浅野温生さんは市役所へ向かう途上、爆心地から1キロメートルほど離れたところで、小さな女の子を背負った70歳前後のおばあさんとすれ違います。未だ余燼くすぶる焼け跡で、ようやく見つ出した孫娘を連れて帰る途中だったのではないかと思われますが、女の子の膝から下はすでに骨になっていました。浅野さんは「地獄絵のような体験を、言葉で伝える難しさを実感した」と云います。「あの日の色や死臭、火傷ではみ出した内臓が灼けたトタンの上でポコンポコンと煮えている音など、説明しても理解してもらうのは難しい」。