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  どうにも世間(世界) 知らずの議員さんたちは、未だに憲法改正がどうたらこうたらと騒いでおられるようですが今、世界は歴史的な転換期に差し掛かっています。ロシア革命から約1世紀を経て、資本主義も深刻な筋肉疲労を引き起こし悲鳴を上げている。一方、共産主義はいち早く崩壊。最早、看板だけしか残されてはいません。それに加えてこの新型コロナウイルスの大流行です(スペイン風邪が猛威をふるったのも約1世紀前)。私たちは羅針盤のない航路を彷徨いながら、荒波に翻弄される小舟のようなもの。

 

今は「分断」が流行言葉のようですが、特にアメリカ合衆国やロシア連邦、中華人民共和国といった大国は(さらにはEUも)、これから深刻な国家崩壊の危機に直面することでしょう。そもそもが小国の集合体であるこれらの国々が、現在の態勢をそのまま維持することは極めて難しい。経済的、社会的または政治的理由から何らかの形で再編せざるを得なくなります。第二次世界大戦以来最大の危機に見舞われ、これまでとはまったく異なる経済・社会・政治システムが編み出されれば、定着するまでには、少なくとも10年は要するものと思われます。

 

 こうしたパラダイムシフトの時代。模範的モデルとして世界の国々から再発見され、見直されるに違いないのが日本国憲法です。世界を見渡しても、これほど崇高かつ普遍的な理念を掲げた憲法典は他に例を見ません。75年もの長きにわたり平和を維持し続けて来られた理由がこの日本独自の憲法にあります(日本国憲法が、米国の”押しつけ”だったか否かについては拙著『平和の栖(すみか)〜広島から続く道の先に』でも言及しています)。

 

世間(世界) 知らずの改憲派の皆さんは、何かと云えば「我が国を取り巻く国際環境の変化」をダシに使いますが、この国は朝鮮戦争、ベトナム戦争といった周辺地域を巻き込んだ”実戦”にも耐え忍ぶことが出来ました。(直接的には) ひとりのいのちも奪わず、奪われることもありませんでした。それと比べれば、この国を取り巻く現況などさしたる危機とは云えません。改憲派も護憲派も、まずは軍事について学ぶことをお薦めします。軍事のイロハを知らずして憲法第九条は語れません。

 

  戦後、日本が生み出した世界に誇れるコンテンツとは一体何でしょう? (今や凋落の一途を辿ってはいますが) ハイテク技術、モノ作りのノウハウ、アニメや漫画もあります。しかしながら、人類史に貢献出来る、といった大局的な観点から云えば日本国憲法。これしかありません。

  憲法公布の”翌日”に発布されたユネスコ(国際連合教育科学文化機関)憲章の前文には、第二次世界大戦の反省から、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心に平和のとりでを築かなければならない (“That since wars begin in the minds of men, it is in the minds of men that the defences of peace must be constructed”)」と宣されていますが、平時までをも鷹揚に包み込む平和主義を謳った公文書は人類史上、日本国憲法が初めての快挙だったことを忘れてはなりません。

 

今後、日本国憲法に倣って憲法を制定する、修正する国家が現れる可能性が大いにあります。公布から74年を経て、世界が日本国憲法の理念に追いつこうとしている。これからいよいよその真価が発揮されるといった大切な時期に、目先の出来事に過剰反応し、取り返しのつかない改正を施してどうしようというのでしょうか。骨抜きにされた平和憲法になど誰も見向きもしません。世界中の笑いものになりますよ、世間(世界) 知らずの日本人の皆さん。

 

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