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  この世には、持つ者と持たざる者とがいます(haves and have-nots)。これは金銭や有価証券、土地家屋といった金融資産だけに留まりません。志や知力、身体能力や夢、性格、笑顔も、持つ者がいれば持たざる者もいる。この世に生まれ落ちた時から身についていたものもあれば、人生を営む過程で得たもの、失ったものもあります。

 

  全人類に分け隔てなく襲いかかる新型コロナウイルスは、私たちに卑小な差異をあげつらう、取り繕う、いがみ合うことの無意味さを知らしめたとも云えるでしょう。どれだけ私たちは、こうした非生産的で偏狭な行為にこれまで現を抜かして来たことでしょう。

  エネルギー総量は、無限ではありません。地球という惑星も、人類も、個人も。また、完璧な人間などどこにもいない。限られた資源を持つ者は、持たざる者に分け与え、効率的に分配し、循環させることで、より良き人間社会は構築されます。

 

   2020年、行動範囲や目的を大幅に制限されたことで私たちは、図らずも思索を深める時間を得ることが出来ました。新型コロナウイルスは未だ終息することなく、遠からず世界恐慌も引き起こされることでしょう。こうした苛酷な試練を乗り越えられれば、私たちはまったく新しい哲学に基づき、従来とは異なる社会を形作って行くこととなります。

 

   2021年、私は、私に与えられた限りある時間とエネルギーを有効に活用すべく、その使途を精査し、少しでも世のため、人のためとなるような作品を生み出して行きたいと考えています。新型コロナウイルスの影響で先送りとなっていた新たな長編の取材・執筆に着手し、構想中のプロジェクトの実現に向けて始めの一歩を踏み出します。

この予想だにしなかった停滞を「損失」と捉えるか、「冥利」と見做すか次第で、今後の人生観は分かたれます。持つ者には持つ者の責務、持たざる者には持たざる者としての矜持が今、問われています。