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   クリスマスまであと2日。この時期ともなれば、かつては街中に『ジングルベル』が鳴り響き、サンタクロースのコスチュームを着た売り子さんたちが、山と積まれたクリスマス・ケーキを売り捌いていました。ところが昨今は、新型コロナウイルスの感染拡大も災いし、東京の雑踏もクリスマスなんぞどこ吹く風。普段と何ら変わらぬ表情を見せています。

   Christ (キリスト) を mas (ミサ: 礼拝) するクリスマス (Christmas: イエス・キリストの降誕祭)は、キリスト教徒にとっては遠方に住む家族が年に一度、顔を合わせるファミリー・デイです。一方、ユダヤ教徒にとっての祝祭日はハヌカ (Hanukah)。ヘブライ暦に従い今年は先月28日から今月6日まで執り行われました。米国滞在中、ユダヤ人の友人も多かったことから、”仏教徒”ながらも冠婚葬祭に参列する機会に恵まれました。

 

光の祭典と称されるハヌカの始まりは、紀元前164年にまで遡ります。エルサレム神殿を占領していた古代ギリシャ セレウコス朝を率いていたアンティオコス4世エピファネスに、ユダヤ人が闘いを挑み神殿を奪回 (マカバイ戦争)。異教徒によって穢された神殿を清め、イスラエルの最高神ヤハウェ (Yahweh) に再び奉納したことを祝うお祭りです。ヘブライ語で「捧げる」という意味のハヌカでは、9つの枝を持つ燭台ハヌッキーヤ(またはメノラー)に毎晩、1本づつ点灯し (元々はオイル・ランプ)、『マーオーズ・ツール』(ma‘oz tzur)という賛歌を歌う習わしとなっています。

 

〽私の避難所、私の救いの岩

あなたに賛美の声を上げる喜び

私たちの祈りの家を建て直し

感謝を捧げます

あなたが吠え立てる敵を

打ち負かしたとき

私たちは詩篇と歌を朗唱し

祭壇を清め、祝います

 

 

 こちらの写真は、今年のハヌカにドイツ連邦共和国の首都ベルリンにあるブランデンブルク門の前に建てられた欧州で最大と云われる32フィートのハヌッキーヤです。第二次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーがユダヤ人などに対する絶滅政策・大量虐殺 (ホロコースト) を説いたこの因縁の場所でのハヌッキーヤの設営は2003年に始まり、今や同地の風物詩となっています。

 

同国は戦後、ナチス・ドイツが行ったホロコーストについては謝罪を繰り返し、個人補償も進めて来ましたが、今年5月になって初めて、同国の植民地であった独領南西アフリカ(現・ナミビア共和国)における虐殺 (ジェノサイド) についても公式に謝罪し (蜂起したヘレロ族の8割、ナマクア族の5割、最大で8万人を殺害)、11億ユーロ(約1,500億円)の復興・開発支援金を拠出すると表明しました (但し、あくまでも道義的責任であり法的な賠償ではないとしています)。しかしながら、虐殺の対象とはならなかったオバンボ族が大勢を占める現政権が支援金を受け取ることに、国内では反発の声も上がっています。”負の歴史“に終止符を打つことは、決して容易ではありません。最後に、聖典『モーゼ五書』(トーラー)と呼ばれるヘブライ聖書から一節。

 

  努めてこれを あなたの子らに教え

  あなたが家に座している時も 

道を歩く時も 寝る時も 起きる時も 

これについて語らなければならない