去る2月1日の軍事クーデターによって国家指導者の地位を追われたアウン・サン・スー・チー氏。国家機密法違反(最高禁錮14年)や無線機の違法輸入、自然災害管理法違反(選挙運動に際し新型コロナウイルス対策を怠った)など6件の容疑で訴追され現在、自宅軟禁状態にある彼女は明日、ミャンマー連邦共和国の首都ネピドーで開かれる審理に出廷する予定となっています(これまでの審理にはビデオ会議システムで出席)。実現すればクーデター後、初めて公の場に姿を現すこととなりますが、国家統治評議会(SAC)が「一部の反政府主義者が弁護士を通じて接触を試みる可能性がある」との理由から、弁護団との直接面会を許していないため、公平かつ自由なやり取りが行われる保証はありません。
云うまでもなく裁判は、SAC主導で進められるため、現時点においてはスー・チー氏の有罪判決は避けられないでしょう。しかしながら、多くの国民から親しみを込めて「アメ・スー」 (スーお母さん)と呼ばれている彼女が約4ヶ月振りに表舞台に登場することで、反政府運動がさらなる盛り上がりを見せることは間違いありません。国民民主連盟(NLD)党首としての彼女の政権運営能力については評価が分かれるところですが、彼女の持つカリスマ性がミャンマー国民にとって、一条の希望の光であることに変わりはありません。
同国のSNSに興味深い投稿がありました。「悪役は次から次へと変わって行くが、ヒーローはたったひとり。スーお母さんだけ」といった諧謔に富んだメッセージです。
ネ・ウィン大統領 (ビルマ社会主義計画党議長) VS. アウン・サン・スー・チー
ソウ・マウン首相 (国家法秩序回復評議会議長) VS. アウン・サン・スー・チー
タン・シュエ首相 (国軍総司令官) VS. アウン・サン・スー・チー
キン・ニュン首相 (国家平和発展評議会第一書記) VS. アウン・サン・スー・チー
テイン・セイン大統領 (連邦団結発展党党首) VS. アウン・サン・スー・チー
ミン・アウン・フライン国軍総司令官 (国家行政評議会議長) VS. アウン・サン・スー・チー
確かに、スーチー氏が1988年に帰国して以来、為政者は何度も入れ替わりましたが、軍事独裁政権は以前のまま。60年近くにわたり軍閥が築き上げて来た権力・利権構造を打ち崩すことが出来るのか。スー・チー氏の、そしてミャンマー国民の悲願である民主主義は果たして実現されるのか。ミャンマー情勢は、新たなステージに入りつつあります。