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先月24日に開催された第5回『NIKKEI 社歌コンテスト 2024』 (主催 日本経済新聞社) の決勝戦は、お陰様で大盛況のうちに終えることが出来ました。

今年は3位に2社、8位にも3社が同点で並ぶなど希に見る激戦となり、有り難いことに審査員は大いに悩まされ、嬉しい悲鳴を上げることとなりました。これら並み居る社歌の中から、今年の「弓狩匡純賞」には、キャノン・マーケティング・アジア様の『Delighting You Always』を選ばせて頂きました (総合6位)。決勝戦の模様は、こちらでご覧頂けます (https://www.youtube.com/watch?v=P_dkyxzG0WE)。

 

日本独自の発展を遂げた企業文化「社歌」には1世紀余りの歴史があります。その間、ブームと呼べる興隆期が幾度かあり、数多くの企業が「社歌」を制定して来ました。第1次ブームは大正から昭和初期に至る「社歌」の黎明期。「家族的結社」が主流であった我が国に、近代資本主義に則った「株式会社」が定着した時代にあたります。第2次ブームは戦後の高度経済成長期。そしてバブル経済成長期 (第3次ブーム) を経て、現在は第4次ブームを迎えています。

今回のブームを牽引している主な要因としては、本コンテストは元より動画共有プラットフォームYouTubeが幅広く浸透したことが挙げられます。それまで社内でのみ使用される”楽曲”に過ぎなかった「社歌」が、動画を伴うことにより、企業イメージをより明確に伝えることが出来るようになり、取引先や消費者といった社外にもアピールする優れたコミュニケーション・コンテンツへと進化を遂げています。

例えば一地方都市の零細企業が社名の認知度を高めるだけでも、これまでは膨大な広告宣伝費を要しましたが、社員の手作りによる「社歌」動画がバズりさえすれば、低予算で一躍全国に知れ渡ることも不可能ではなくなりました (「社歌」は、新製品の発売に合わせて制作され、ワンクールのみで”消費”されるコマーシャルソングとはまったく意味合いが異なります)。実際、本コンテストに応募したことで入社希望者が増えた企業も少なくありません。

 

こうした第4次ブームの只中にあって、私はすでに第5次ブームの到来を予感しています。キーワードは国際化です。我が国とは異なりアジアのみならずヨーロッパでも、大半の企業は人種や性別、言語、学歴、信仰、慣習の異なる社員を当たり前のように雇用しています。昨今、日本企業の間で取り沙汰される”ダイバーシティ”といった概念は、世界ではそれこそ半世紀も前から常識となっていますが、それだけに組織体に対する帰属意識を醸成する、”共通言語”を形成する困難さも味わって来ました。

それが現在、「社歌」が海外からも注目を集めつつある主な理由です。今回「弓狩匡純賞」に選ばせて頂いたキャノン・マーケティング・アジア様の『Delighting You Always』は、こうした新たなトレンドの魁とも云える完成度の高さがセレクションの決め手となりました (本コンテストへの応募作品にも外国語ベースの社歌が増えています)。

 

動画を観て頂ければわかるように、この「社歌」は英語を始め台湾華語、マレー語、タガログ語、タイ語、ベトナム語、ヒンディー語、広東語で歌われ、各国支店の社員の皆様が切れ目なく歌い継いでいらっしゃいます。こうした「歌」を通じた社内コミュニケーションの発揚、エンゲージメントの強化は今後、世界へと伝播して行くものと思われます。社歌が海を越え、野を駆けて行く。製品のみならずメイド・イン・ジャパンの企業文化も輸出される。想像しただけでも胸が高鳴ります。