何だかんだ云ったところで、やっぱりダンスは楽しくなければお話になりません。理屈はいらない。しかめっ面は御法度。泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生。ならば歌って踊って楽しく暮らしたい♪ そんなこんなで今日も、朝も早よから、ついつい顔がほころんでしまう、飛びっ切りハッピーなダンスのご紹介です(またまたラテン・ダンスからはちょいと横道に逸れますが)。
今世紀に入り、ニューヨークやパリではスイング・ダンス、1930年代のジャズを奏でるビッグバンドの生演奏をバックに踊る”リンディホップ(Lindy Hop)”がリバイバルヒットしています。リンディホップは畏まった社交ダンスではなく、世界恐慌の真っ只中、自暴自棄になった若者たちが一心不乱に踊り倒す Savage(カッコイイ)や wicked(猥雑な)、Spooky(お化けっぽい)といった表現がお似合いのステップ。チャールストンやタップ、ブレイクアウェイなど、様々な要素が混ざり合った何ともワイルドなダンス・スタイルです。
リンディホップは、20年代にニューヨークのハーレムで誕生し、30年代には世界中の若者たちを虜にしました。ブームを牽引した『サヴォイ・ボールルーム』(596 Malcom X Blvd. & 14th St.)は、1925年から58年までハーレムに存在した4,000人収容の巨大なダンスホール。ここでデューク・エリントンを始めチック・ウェッブ、フレッチャー・ヘンダーソン、カウント・ベイシーといった錚々たるビッグバンドが腕を磨きました。”リンディホップ”の語源は、1927年にニューヨーク/パリ間を単独飛行したチャールズ・リンドバーグにちなんで、アフリカ系米国人のダンサー ジョージ”ショーティ”スノーデンが名付けたという説が有力です。リンドバーグのニックネーム”リンディ”が大西洋を”ホップ”した(飛び越えた)、というわけです。
映像は、パリのダンス・スクール『Jazz Roots』のサタデー・ナイト・パーティーの模様。謝恩会でしょうか。ダンス教師が二手に分かれてダンス・バトルを行っています(当時はこのようなダンス・バトルやダンス・マラソンが盛んに行われていました)。
予め決められた振り付けはなく、各人が勝手気儘にアドリブで踊りまくっています(とは云え、さすがはダンスの先生方。お酒も入っているでしょうが、各人の見せ場は尊重し合い、しっちゃかめっちゃかのように見えて絶妙な匙加減でバランスが保たれているところが心地良い)。
何がいいって、あからさまな美男美女がいないこと(苦笑)。本当は皆、ブロードウェイの舞台に立ちたかったんだろうなぁ〜、とホロリとさせられるところがまた堪りません。おもろうてやがて悲しきダンスフロア哉。