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  「食」は、「衣」、「住」と並んで、生きることの基本です。幸か不幸か私たちが住むこの国では、食料自給率が著しく低下したにも関わらず(平成30年の供給熱量ベースでは37%)、インスタント食品から調理済み食品に至るまで、ありとあらゆる「食」がそこここに溢れ返っています。(絶対量が少なかったため、多くの人々が餓死寸前であったとは云え終戦直後の昭和21年における食料自給率が88%だったことを考えれば、隔世の感があります。

 

昨今、男女を問わず、料理が出来ないひとが増えていると云います。率直に、「悲しい」と思います。私も一応、調理は嗜みます。ただ、炊事が好きで始めたわけでは毛頭なく、米国に留学時代、やむにやまれず始めたことから、まったくの自己流です。従って、食材や道具に過度にこだわる麗しき料理男子とは縁遠いワイルド系、男臭さ満載のまかない方に過ぎません。米国人は、「朝食はハンバーガーで済ませ、昼食もハンバーガーを食し、さぁて夕食はどこのハンバーガーを試そうか」と思い悩む国民です。さすがにこうした食生活にはついて行けないと考え、致し方なく包丁を買い求めたのがきっかけでした。

 

私が「料理が出来ないこと」を憂うのは、それが極めてクリエイティブな作業だからに他なりません。メニューを決めるところから始まり、食材を買い出し、下準備をこなし、調理する。これら一連のプロセスには創造力が求められます。こんなにも手軽にモノ作りと関われるのに、手を染めないとはいかにも勿体ない。

緊急事態宣言が発出され、自宅に篭もる時間はこれからさらに増えることでしょう。上手い下手はさて置き、皆さんも厨房に立ってみてはいかがでしょうか。ゴルフと同じく、料理には性格が表れます。あなたの知らないあなたに出会えるかも知れません。

 

こんな窮屈な時代に、暫しほっこりとさせてくれるのが、世界中で1,000万人ものフォロワーがいるためご存じの方も多いかとは思いますが、人気ビデオブロガー 李子柒 (リー・ズーチー)さんが、中華人民共和国・四川省の山村から発信している一連の動画です。

とにかく四季折々の風景、伝統的な山村の暮らし、そして日々の調理の様子を小気味よく捉えた映像が唯々美しく、さり気なく拾われる生活音にも心癒やされます。まるで田園小説を紐解いているような心地よさに満たされます。

 

祖父母に育てられた李子柒さんは、14歳から都会に出て働いていましたが、お祖母様が病気になったことを契機に故郷へ戻り、5年ほど前から映像制作に取り組み始めたそうです(当初はひとりで切り盛りしていましたが、今はカメラマン、アシスタントと共に撮影しているとのこと)

彼女は、農村の生活をリアルに描いているわけではなく、彼女が理想と考えるライフスタイルを創り出している、と云います。ゆったりと時が流れるアジアン・スローライフは、今の私たちにも訴えかけるものがあります。いただきます。ごちそうさま。さぁて今日の献立はどうしましょう?

 

『おいもさんの生き方!(The Life of Potato!) と名付けられた作品。冬から春へと季節は巡り、観る者のお腹もグーグー鳴り始めます♪

昨年制作された『春節のお菓子』(A Special Program on New Year Snacks)。新年を迎えるための素朴なお菓子が幾つも紹介されています。