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  予想されてはいたものの、新型コロナウイルスの襲来により今年度のリオデジャネイロのカルナバルの中止が此の度、エドゥアルド・パエス市長によって正式に発表されました。当初、来月13〜16日に予定されていたカルナバルは、ひとまず 7月11〜12日に延期されていました。ところが強烈なサンバのリズムと云えども凶悪なウィルスには勝てなかった…。現時点においては「全市民がワクチンを打ち終わった2022年に開催」との意向が示されていますが、カルナバルだけが生き甲斐であるカリオカたち(リオデジャネイロ市民)の落ち込み振りは、いかほどのものか。

 

  カリオカにとってカルナバルは、人生そのものです。カルナバルのために汗水垂らして働き、なけなしの金を貯め、江戸っ子の如く「カルナバル越しの金は持たぬ」。カルナバルと共に生き、カルナバルに見送られて天国へと赴く。それが、カリオカの美学です。

  ブラジル連邦共和国の各都市には、エスコーラ・ジ・サンバ (Escola de Samba)と称されるコミュニティの親睦団体があります(日本で云えば、町内会に近い存在)。グルッポ・エスペシアウ (Grupo Especial)と呼ばれるいわゆるトップ・リーグに属するエスコーラは何と3,000〜5,000名ものメンバーを抱える大所帯です。

 

  こうした隣近所の仲間たちが栄光のサンボードロモ (Sambodromo)、檜舞台を目指して半年以上も前から練習を始めます。エスコーラの練習はエンサイオ (Ensaio)といいますが毎年、各エスコーラ専用の巨大なテントが建てられます。ここに毎週のように集まり、歌って、踊って、酒を酌み交わす♪ エスコーラの素晴らしいところは老若男女の違い、リズム感や歌唱力のあるなし、美醜などお構いなし。皆にそれぞれのパートが与えられ、全員がパレードに参加出来ることです。一体全体、練習なのか? それともパーティーなのか? は野暮な質問で、こうして幼い頃から見知った顔が頻繁に集まることで仲間意識が高まり、地域の絆が深まり、恋も生まれます。Não Deixe o Samba Morrer!  (愛のサンバは永遠に!)

 

エスコーラのリードヴォーカルはプシャドール (Puxador)と呼ばれ、尊敬の対象となります。観客を含めると10万人余りもの人々を魅了するだけに、並の歌唱力では務まりません。こちらは現存するエスコーラとしては最も古く(1928年設立)、私が愛して止まないエスタサォン・プリメイラ・ジ・マンゲイラ(G.R.E.S. Estação Primeira da Mangueira Mangueira)のプロモーション・フィルムです(2020年)。

各エスコーラは毎年エンヘード (Enredo)、パレードのテーマを定め、これに沿ったテーマ曲サンバ・ジ・エンヘードを作ります。カルナバルの3〜4ヶ月前にはこれらの曲を収録したCDが発売され、町中がカルバナル・モードに突入。各エスコーラの練習風景を収めたプロモーション・フィルムも作成され、テレビでもヘビー・ローテーションで流されます。この映像は同じく2020年にリリースされた名門エスコーラ ベイジャ・フロール・ジ・ニロポリス(G.R.E.S. Beija-flor de Nilópolis)のプロモーション・フィルムです。