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  私は、いわゆる帰国子女ではありません。どこにでもある公立高校を卒業するまでは、外国人に道を聞かれると、(相手が英語を母語としているかどうかもわからぬまま) ついつい「アイム・ソーリー」と意味もなく苦笑いを浮かべてしまうような、どこにでもいる典型的な日本人のひとりでした。それが何の因果か米国の大学へ留学し、学士さんになったことから海外の政治家から企業家、アーティストやアスリートに至るまで、数多くの方々にインタビューを行い、海外紙にも寄稿するまでになったわけですから世の中、何があるかわかりません。

 

  そう云えば「英語がぺらぺら」という言い回しがあります。いわゆるオノマトペ(擬音語・擬態語)の一種です。外来語のようにも聞こえますが、古いところでは「口の止所がねへ、ぺらぺらぺらぺらと油紙へ何とかやらだ」(式亭三馬著 滑稽本『浮世床』より)といった記述も残されているため、17世紀にはすでに用いられていた擬態語です。語源は定かではありませんが、「薄紙をめくるように楽々と」といった意味合いだったものと思われます。

 

 翻って私の英語はと云えば”米語”、しかも留学先がフィラデルフィアであっただけに東海岸特有の訛りがあります(もちろん日本語訛り満載っ♪)。海外で生まれ育ったほぼほぼネイティヴ・スピーカーとは異なり、「ぺらぺら」というわけではありませんが、関西で産湯を使っただけに、ノリはラテン系♪ 会話の抑揚はお手の物です。学生時代、特に英語の成績が良かったわけではなく、現地で体得した部分が大きいことから、英語を母語とする話者に「こいつは英語が話せる」と思わせるニュアンスの扱いには長けている方だと思います。

端的に云えば、受験勉強に明け暮れ、英語能力測定試験(TOEFL)では高得点を叩き出すような日本人が「私は、ハンバーガーが好きです」と云うところを、「え、そ〜なんだぁ。俺? 俺はねぇ〜。どうだろうなぁ。ハンバーガーね。いんじゃね?」といった類の口語表現(Colloquial language)です。日本語でも同じでしょう。「私、”広島焼き”好きです」と云う生真面目な英国人よりも、「私っすかぁ〜。そりゃもうね、お好みが”お好み”ですわぁ〜」などとひと捻りかまして来る米国人の方に親しみを感じてしまうのが人情というものです。尤も私は、日本語が「ぺらぺら」の米国人ほど警戒してかかりますが…。

 

そんなこんなでこの連載では、なぜ私たち日本人は英語下手なのか? をつらつら解き明かすと共に、学校では決して教えてくれない実践的な英語との付き合い方について、気儘に綴ってみたいと思います。