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キューバ共和国は、カリブ海に浮かぶ大韓民国とほぼ同じ面積のトロピカル・アイランドですが、そのたわわに実った文化には目を瞠るものがあります。米大に在学中、「カリブ海諸国」に関するクラスを受講しましたが、その8割方はキューバの歴史に費やされていました。

1492年にクリストファー・コロンブスが上陸し、スペイン人のコンキスタドール(Conquistador)によって先住民族は抹殺され、砂糖、そして奴隷貿易の中継地点として発展。1902年に独立を果たしたものの米国の軍政下に置かれ、フルヘンシオ・バティスタ大統領による軍事独裁政権が民を苦しめ続けました。1959年1月1日に、フィデル・カストロ率いる革命軍によってバティスタ大統領は国外逃亡。いわゆるキューバ革命が成し遂げられて以降、独自の社会主義路線を歩んでいます。米国を含む北・中米史は、キューバを抜きにしては語れません。

 

音楽も然り。ソンやボレロ、コンガ、チャチャチャにルンバ等々、キューバ発祥のラテン音楽は枚挙に暇がありません。キューバ革命により西側諸国との交流が遮断されると、今度は母国を逃れて米ニューヨークに移り住んだ亡命キューバ人やプエルトリカンらによって、ロックやジャズの要素を採り入れたサルサが新たに編み出されました。

サルサ(salsa) の語源は、ホットなサルサ・ソース。ラテン語で”塩味”を意味する”Salsus”の女性形が元となっています。1968年に結成されたファニア・オールスターズがその嚆矢として知られていますが、80年代からはドミニカ共和国のメレンゲなど他のカリブ諸国の音楽とも融合し、ハウスミュージックやテクノの要素も採り入れながら進化を続けています。強烈なリズムに潜んだ哀愁を帯びた旋律は、亡命キューバ人の望郷の念の発露とも云えるでしょう。

 

そんなこんなで今朝も、サルサ・ダンスの魅力にすっかり浸って頂きましょう♪ ステップも各地で異なりますが、”本場”ニューヨークではラテン・ミュージック特有の「クラーベ」でも8拍で6ステップを踏むプエルトリカン・スタイルが主流となっています。ご紹介する2本は、キューバに里帰りしたサルサのペア・ダンスで、若手ダンサーたちがイキのいいステップを披露してくれています。この連載の第1回に登場して頂いたいやらしさ満載のエルネスト・ガルシアさんとは比べようもありませんが、若造くんたちもなかなかどうして、いい味を出してます♪

 

曲はプエルトリカン・バンド マルカ・レジストラードによる『ベルドナメ』。公式PVなのに撮影は、何の変哲もないキューバの首都ハバナの路上です。これがまたいい♪ 同国は、米国による経済封鎖によって西側の車が入手出来なくなったため、今でも50年代のアメ車が大切に使われており(これは50年代後半のシボレー・コルベット?)、クラシックカー・マニアにとっては憧れの地でもあります。

こちらは31歳の若さで夭折したキューバ人歌手エル・ダニーが歌う『テ・エスペレ』。この、「下宿屋のお嬢さんと年下の大学生」を臭わす甘酸っぱい設定が何ともいやらしい♪ それにしても、公式PVであるにも関わらず、住民の女の子が出入りしたり、水を汲みに行ったりするところが何ともナチュラル♪ 踊ることが、日常の一部であることがこの映像からも窺えます。