今年1月13日の投稿【旧・広島陸軍被服支廠倉庫の再生問題をつらつら考えるの巻⑬】で、今年4月にフランスのボルドーでオープンしたアートセンター『バッサン・デ・リュミエール(Bassins de Lumieres)』を紹介しました。被服支廠倉庫の利活用法のひとつとして、同館のような壮大なデジタルエキシビション・スペースとしてはどうか、といった提案でした。

   こうした最先端のプロジェクション・マッピングを用いたデジタルアート空間の創出は現在、世界的に高い注目を集めています。こちらの映像は、パリに初めてお目見えしたデジタル・アートセンター『アトリエ・デ・ルミエール(ATELIER des LUMIÈRES)』で開催された『ヴァン・ゴッホ 星月夜(The Starry Night)』展の様子です(昨年2月22日から今年1月5日)。同展は、欧州最大の”光の祭典” 『アムステルダム・ライト・フェスティバル(Amsterdam Light Festival)』でも2年前に催され、大反響を呼びました。

 

   被服支廠倉庫の壁面、天井のみならず床面も、それこそ360度フルに活用し、日本が世界に誇るアートワークに限定。葛飾北斎を始めとする浮世絵や豪華絢爛な狩野派の名作を常設展示(上映)してみてはいかがでしょうか。光と音の饗宴を、我が国の最先端技術とクリエイティビティを投入し演出出来れば、必ずや世界各国からアートファンが押し寄せます。

   また、毎年6月〜8月の3ヶ月間は特別展示期間とし、広島の戦前、原爆投下、戦後復興の様子をフルスケール3Dで再現する。東京大学大学院 情報学環・学際情報学府の渡邊英徳教授が取り組んでおられるニューラルネットワーク(人工知能)を用いた自動色付け+手動補正によってカラー化された過去の画像などを元に3D化し、当時の音声も各種データに基づき正確に再現出来れば迫力あるプレゼンテーションとなるでしょう。

 

   少なくとも100億円は要するであろう被服支廠倉庫の全棟修復・保全を本気で考えるのであれば、世界中の人々を魅了する「広島に来なければ体験出来ない」大規模なエンターテインメント施設へと生まれ変わらせる叡智と覚悟が必要です。残念ながら、過去を語るだけでは未来を築くことは出来ません。広島のみならず全国、全世界でこれまで、「時を止める」ことのみに固執した結果、数多くの貴重な遺構が失われて来ました。利活用法構築のタイムリミットまで残すところ約半年。既にカウントダウンは始まっています。

 

このページのトピック