広島市立基町高校・創造表現コースの「次世代と描く原爆の絵」プロジェクトでは、どのような作品が描かれているのか教えて欲しい、観てみたいといった声が多数寄せられているため、所蔵されている広島平和記念資料館の許諾を得て、過去15年間に延べ155名の高校生たちによって描かれた182点もの作品群の中から数点を順次、(拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』に収録されていない作品を中心に) ここでご紹介させて頂いています。
『みんなで死のう、みんな一緒よ!!』 作/武原明步 所蔵/広島平和記念資料館 (2019年度)
被爆体験証言者の八幡照子さんは、己斐本町にあった自宅で被爆しました。爆風に吹き飛ばされ、朦朧となった意識の中で八幡さんは、母親の「みんなここに集まりなさい!」という必死の叫び声を耳にします。半壊した家の中はめちゃくちゃとなり、土煙がもうもうと立ち込めています。おそらく、第二、第三の”大型爆弾”が落とされれば、とてもではないが助からないと覚悟したのでしょう。あんなにも優しかった母親が表情を一変させ、ずっしりとした大きな綿の掛け布団を家族の上に広げながら、「みんなで死のう、みんな一緒よ!!」と悲壮な、しかしながらきっぱりとした声で言い切りました。
八幡さんは、布団の中でじっと肩を寄せ合ったあの時の家族の体温、暖かさ、子供心に感じた家族の絆を今でも、決して忘れられないと云います。
