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先月28日、東京・白金台の明治学院大学 白金校舎にて開催された 【2022年度】 現代平和研究3 『明学赤十字講座』の特別講座② を聴講して来ました。赤十字国際委員会 (ICRC) 駐日代表部の広報統括官である眞壁仁美さんが、国際人道法の意義と紛争地域における赤十字の役割、特にウクライナにおける支援活動の最新情報を、大学生にもわかりやすいように噛み砕いて話されました。その後、志を同じくする眞壁さんとは意気投合し、時が経つのも忘れて語り合いました。

 

とりわけ ICRC が2019年(令和元年) に世界16の国と地域に住む (平時、戦時下の国と地域が約半分ずつ) 20〜35歳のいわゆるミレニアル世代1万6,000人に対して行った大規模なアンケート 『火をつけたのは彼らじゃない: ミレニアルが考える戦争と平和』 (They didn’t start the fire: Millennial views on war and peace) の結果に興味をそそられました。

 

ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻前に行われた調査であったにも関わらず、驚くことに回答者の47%が「生涯のうちに第三次世界大戦が起こり得るだろう」と答えています。また、84 %が「核兵器の使用は決して容認出来ない」と回答している一方で、54%もの若者たちが「10年以内に核攻撃が起こる可能性がある」といった悲観的な反応を見せていました。今、同様のアンケートを行えば、おそらく数字はさらに跳ね上がっていたことでしょう。

 

茫洋たる不安感が現実のものとなりつつある。私の友人知人を含め、特に欧州に住む人々のメンタリティは、この半年余りで大きく様変わりしています。核兵器の脅威をどちらかと云えば理屈で捉え、論じていた反核・平和運動家も、「もしかしたら放射性物質が自分にも降りかかって来るかも知れない」といったリアリティを伴って受け止め始めている。広島・長崎といった極東の片隅やキューバ共和国といった遠く離れた南の島の話ではない”自分事”として、考えざるを得なくなっています。戦時における初の原子爆弾が広島に投下されてから77年余りを経て我々は、漸く核兵器廃絶の鳥羽口に立ったと云えるでしょう。

 

 

唯一の救いは、回答者の74%が「戦争は避けられる」と考えており、75%が「戦争の手段や方法に規制を課すべき」と答えている点です。こうした若者たちの危機意識の高まりを背景に今後、核兵器禁止条約(TPNW) を批准する国および地域は国連加盟国の半数を超え、徐々に核兵器保有国に対してプレッシャーをかけることとなる。ウクライナ紛争は、核軍縮の歴史においても大きなターニング・ポイントとなる可能性を秘めています。

 

云うまでもなく、戦争体験者は二度とあの経験をしたくない、させたくないといった想いが強い。このアンケートでも、戦闘状態の真っ只中にいるシリア・アラブ共和国の若者たちの98%が「核兵器の使用は容認出来ない」と最も高い数字を示し (第2位はコロンビア共和国の93%、第3位がウクライナの92%)、化学・生物兵器についても96%がその使用に反対しています。幸運なことにも戦争を知らずに生まれ育った我々日本人は、こうした世界史の転換期といかに向き合い、どのような足跡を残すのか。その鍵は誰でもない、ミレニアル世代以下の若者たちが握っています。