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政治漫画を掲載しているインターネットサイト『タイニービュー・コム』に掲載されたロブ・ロジャーズ氏の風刺画。境界線で隔てられたパレスチナ自治区ガザの市民は「私たちはハマスではない」、イスラエル市民は「私たちはネタニヤフではない」と書かれたプラカードを掲げています。

 

戦争と人類は、切っても切れない関係なのか。怒りや憎しみ、妬みや嫉みから逃れられない人類は、いつまで加害者そして被害者であり続けるのか。世界各地で武力紛争、政変を垣間見て来た身としては、絶望的な思いに駆られることが少なくありません。

 

こちらの地図は、多言語インターネット百科事典ウィキペディアに記述された過去4,500年にわたる人類の「戦闘行為」を点で示したものです。ややもすれば我々現代人は、戦争などといった野蛮な行為は、人権意識に乏しい”後進国”で起こるものだと思い勝ちです。しかしながらこの地図を見れば、そうした考えこそが傲慢の極みであることがわかります。

事実、血で血を洗う戦場の大半は北緯30度から60度辺りに集中しています。技術革新によってもたらされた文明の進化が生み出した欲望が、諍いの原動力となっているのは明らかでしょう。それは、平穏無事な環境に守られながら戦争反対、平和主義を声高に唱えている皆さんにも起こり得ることです。

 

 

リアリストたれ。戦争というものは、皆さんが考えているほど抽象的でも概念的でもありません。目の前で頭蓋骨が吹き飛び、血飛沫が舞い、遺体は軍靴によって踏みにじられる。年端もいかない子どもでさえ、銃を構えれば一人前の”敵”と化し、愛する家族のためであれ、生き残りたければ引き金を引かざるを得ない。それが戦争の冷酷非道な実相であり、何万年を経ても尚、我々人類が断ち切れない飽くなき欲望の所産なのです。

 

非戦の思想は、常に高く掲げていなければなりません。しかしながら、「人を殺めてはいけない」と正論を吐くのは簡単です。これまで凄惨極まりない”現場”に直面した無数の人々が何百年、何千年にもわたり、人類が持って生まれた”本性”を超越すべく、命を張って闘って来たことを忘れてはならない。

安易なセンチメンタリズムがいかに無力であるか。一歩、外に出れば否応ナシに知らされます。人類のアイデンティティそのものを書き換えるほどの哲学的変革なくして、人類が戦争という宿痾から逃れ、絶縁する方策がないことは、歴史を見れば明白です。ウィリアム・シェークスピア曰く、「地獄は空っぽ。すべての悪魔はここにいる」”Hell is empty and all the devils are here.” (戯曲『テンペスト』より)。さて、あなたはいかに思考し、行動するのか。そして平和に一歩近づくのか。