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広島東洋カープが5年振り6度目のクライマックスシリーズ (CS) 進出を決め、鯉党としてはひと安心。しかしながら今月14日に、阪神タイガースがセ・リーグ優勝を決めた時点で2位カープとのゲーム差は13。3位の横浜DeNAベイスターズに至っては16ゲームも離されており、率直に云って実力差は明らかでした (今シーズンはパ・リーグも同様に、オリックス・バッファローズが独走していました)。

これほどの大差をつけられたチームが改めてCSを戦い、日本選手権シリーズへの出場権を争う必要はあるのでしょうか? 一体、何のためのペナント・レースなのでしょうか?

 

結論から云えば、すべては興行のため。その意味においてCSは、完璧とは云えないまでも非常に良く練られた方式と云えるでしょう。CSは、ぶっちぎりでリーグ優勝を飾ったチームのファンの心情よりも、プロ野球というスポーツ興行の生き残りをかけて、米メジャーリーグのワールドシリーズに至るディビジョン・シリーズ (DS) に倣い、2007年 (平成19年) からセ・パ両リーグで採用されたポストシーズン・トーナメント方式です。

20歳以下のプロ野球ファンの皆さんはご存じないでしょうがCS導入前の、特にリーグ優勝チームが決まった後の”消化試合”は惨憺たるものでした。観客動員数は激減し、緊張感が途切れた選手も (個人記録がかかった選手以外は) 無気力試合を連発。下手をすれば50試合前後で閑古鳥が鳴くほどの有様でした。さらに悪いことには1992年 (平成4年) にJリーグが開幕し、スポーツファンの野球離れが顕著となっていました。

 

 

スポーツと謂えどもプロである以上、エンターテイメントであり興行です。起死回生の一手として編み出されたのがCSですが、そうは云っても半年にもわたる激戦を勝ち抜いたチームが、”下剋上”と云えば聞こえはいいものの、”敗者”に王座を譲るなどなかなか納得出来るものではありません。

特に鯉党にとって忘れられないのが2017年 (平成29年)。2位タイガースに10ゲーム差、3位ベイスターズには14.5ものゲーム差をつけていたにも関わらずCSで敗退 (ベイスターズが日本シリーズ進出)。未曾有のどんでん返しによって失意のどん底に叩き落とされました。

 

 

リーグ優勝を果たしたチーム以外が日本選手権シリーズに進出した例は、セ・リーグではこの年を含めて3回、パ・リーグでは2006年 (平成18年) まで実施されていたプレーオフ制度時代を除けば1回のみであるため、ほぼ順当な結果を生んでいるのは確かです。

しかしながらCSの制度設計に疑問を呈する声は後を絶たず、元・タイガースの4番打者で現在、サンテレビで野球解説をしている広澤克実氏も先月28日、「優勝時に2位のチームと5ゲーム以上の差があれば、CSは開催すべきでない」との見解を示しています (デイリー新潮9月21日付)。

確かに全12チーム中、半分の6チームに日本選手権シリーズへの出場チャンスがあるというのは余りにも太っ腹で、リーグ優勝を果たしたところでファンは「まだCSがある」と、手放しでは喜べません (メジャーリーグは全30チーム)。

 

とは云え、「5ゲーム差」はまだ”大差”とも云い切れないため、私としては「10ゲーム差」が選抜要件としては妥当なのではないかと考えます。その上で、セ・パ両リーグの2位と3位のチームでポストシーズン”交流戦”を行い、勝ち星の多かった各リーグ1チームに挑戦権を与えてはいかがでしょう。こうすれば、リーグ優勝チームが2週間近く実戦から遠ざかるといったデメリットは解消され、興行的にも十分に採算が取れるはずです。

いずれにせよ選手のみならず、ファンも「ヒリヒリするような10月」を過ごせるような方式でなければ、結果的にプロ野球人気は下降線を辿るばかり。絶頂感なくして満足感は得られませんよ、NPBコミッショナー殿。

 

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