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先日7日に実施された東京都知事選挙は、現職の小池百合子氏が全体の42.8%にあたる2,918,015票を獲得し圧勝。3回目の当選を果たしました。

この結果を受けてマスメディアは、例によって型通りの分析を行っていますが、与野党が推した候補者同様、いずれも新味のないものばかり。このブログでこれまで幾度も指摘して来たように、ここでしっかと認識すべき点は、いわゆる無党派層の半数以上は保守穏健派のサイレント・マジョリティで占められているといった現実です。

事実、投票率が2014年 (平成26年) 以降、最も高い60.62%を記録したにも”関わらず”、小池氏は無党派層の30%余りから支持を得ています (蓮舫氏は約20%)。これは、選挙ポスター掲示板を巡る”違反”行為など、公職選挙法の根幹を揺るがす事態が続出したことに業を煮やした保守穏健派が、居ても立ってもいられず投票行動を起こしたと見るのが順当でしょう。

 

また蓮舫氏について云えば、対立軸を好むオールド・メディアによって「批判しかしない野党」といったステレオタイプに填め込まれることを経験値から熟知しているにも”関わらず”、その殻を破る新規性に富んだ選挙戦略を何ら打ち出せなかったことが最大の敗因として挙げられます。

立憲民主党の辻元清美代表代行が選挙後にこぼした「政党としても私個人としても、やっぱりもう古くなったのかな、もう通用せえへんのかなとか、ちょっと思った」 (『毎日新聞』7月8日付) といった現場感覚は、あながち見当違いではありません。

 

 

その間隙を突いて得票数を伸ばしたのが元・広島県安芸高田市長の石丸伸二氏です。東京に地盤がないにも”関わらず”、200回を超える街頭演説とYouTubeによる動画配信を駆使することで全投票数の24.3%を獲得。第2位に躍り出ました。

社会に対して茫洋たる不満を抱いてはいるものの、その所在を自ら突き詰めて考え、行動しようとはしないコミュ障のZ世代に向けて明確に”敵”を提示し、彼らに成り代わってその旧態依然とした言い分を徹底的かつピンポイントで論破して見せる。石丸氏のストラテジーまたは”話芸”は、政治経験がゼロであったにも”関わらず”、ソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS) を通じてWASP (ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント) の労働者階層や右派ポプュリストの熱烈な支持を集め、16年 (平成28年) の米大統領選挙を征したドナルド・トランプ氏の選挙戦術または”芸風”を思い起こさせます。

詳細は、『希代のトリックスターのお通りだ!』 (2020年10月9日付: http://japanews.co.jp/concrete5/index.php/Masazumi-Yugari-Official-Blog/2020/2020-10/希代のトリックスターのお通りだ) と『マスメディアなんぞ蹴っ飛ばせ!』 (同年10月24日付: http://japanews.co.jp/concrete5/index.php/Masazumi-Yugari-Official-Blog/2020/2020-10/マスメディアなんぞ蹴っ飛ばせ) に綴りましたがトランプ氏は、”第4の権力”の座に安住していたオールド・メディアの弱点を突き、良きにつけ悪しきにつけ、国民に直接語りかけるチャンネルを手に入れました。

 

国政への進出を示唆する石丸氏に対して与野党共に取り込みを画策し始めているようですが、政策論議を疎かにすれば結果的に、党としてのポリシーのなさを露呈することとなります。予想を大きく覆されたオールド・メディアは米国同様、型破りなトリックスター 石丸氏を祭り上げ、やがて追い落とすものと思われますが、そうしたお決まりのパターンそのものが時代遅れの媒体であることを改めて国民、特にZ世代に知らしめてしまうでしょう。

SNS を以て SNS は制するしか手立てはありませんが哀しい哉、この国のネット事情は先進各国よりも遙かに遅れています。開かれた言論空間として機能していない最大の理由は、発信者も受信者も SNS を”落書き”としてしか見做していない。ネットユーザーの公的意識の低さにあります。

米国がひいた風邪は、8年遅れで日本列島に襲いかかって来ました。新たな劇場型政治の始まりです。

 

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